犬が歯磨きを嫌がる理由とやり方は?老犬や噛む場合の対処法も解説

目次
愛犬の歯磨きに何度も挫折している飼い主さんは、少なくありません。ある動物病院のアンケートでは、およそ半数の飼い主さんが「歯磨きを嫌がるのでできていない」と答えています。
歯ブラシを見せただけで逃げる、口を開けてくれない、噛もうとする。犬が歯磨きを嫌がる原因は、主に「口元を触られる怖さ」と「口の中の痛み」の2つです。どちらなのかを見極めてから慣らし直せば、成犬でも老犬でも少しずつ受け入れてくれるようになります。
この記事では、嫌がり方のレベル別に対処法を整理し、そこから進める6ステップのやり方を解説します。噛んでしまう犬や老犬への進め方、どうしてもできないときの代わりのケアも合わせて紹介していますので、ぜひ最後までご覧くださいね!
犬が歯磨きを嫌がる理由は?
歯ブラシを手に取ったとたん逃げる、顔をそむける、前足で手をはらいのける。反応の出方はさまざまですが、そこには必ず理由があります。理由がわからないまま回数だけ重ねても、犬の抵抗は強くなる一方です。まずは、愛犬がどれに当てはまるかを探るところから始めましょう。
犬が歯磨きを嫌がる理由は、大きく以下の4つに分けられます。
- 口まわりは本能的に守りたい場所だから
- 過去の歯磨きで怖い思いをしたから
- 歯ブラシの感触や味に慣れていないから
- すでに歯や歯茎が痛いから
①犬の口まわり:守りたい急所
犬の口元は、自分の目では直接見えない位置にあります。そこへ突然手が伸びてくれば、驚いて当然です。口は食べるための大切な器官でもあり、本能的に守ろうとします。歯磨きを嫌がるのは、わがままでも性格の問題でもありません。
②過去の歯磨き:怖い経験
一度でも押さえつけられて磨かれた犬は、その経験をしっかり覚えています。叱られた、体を固定された、痛かった。こうした記憶が積み重なると、歯ブラシを見ただけで部屋から出ていくようになります。歯磨きが嫌なのではなく、歯磨きの時間に起きたことが嫌なのです。
③歯ブラシの感触や味に不慣れ
犬にとって歯ブラシは未知の道具です。硬い毛先が歯茎に当たる感覚も、歯磨き粉の香りも、経験したことのないものばかり。口の小さな小型犬に大きめのヘッドを使うと、それだけで違和感につながります。道具が合っていないだけなら、変えれば解決します。
④すでに歯や歯茎が痛い
見落とされやすいのが、痛みが原因のケースです。歯周病や口内炎が進んでいる犬は、口元に触れられるだけで痛みを感じます。動物病院でも、口の中の炎症がひどくなると顔を触られるのを嫌がる、歯磨きを嫌がるといった変化が現れると説明されています。歯石が付いている、歯茎が赤く腫れている。そんな様子があるなら、磨く前に診てもらってください。
犬が急に歯磨きを嫌がるようになった場合の確認ポイント
明るい場所で唇をそっとめくり、次の点を見てください。
- 歯茎が赤く腫れていないか、出血していないか
- 歯がぐらついていないか、欠けていないか
- 茶色い歯石が付いていないか
- 口臭が急に強くなっていないか
- よだれが増えた、食べるスピードが落ちたなどの変化がないか
もし口を触られること自体を「全身で嫌がる」、「片側だけで食べ物を噛む」、「顔を触ると鳴く」。こうしたサインがそろっているなら、自宅で解決しようとせず受診してください。痛みが原因なら、治療しない限り何を工夫しても嫌がり続けます。逆に治療すれば、あっさり磨かせてくれるようになる子もいます。
犬が歯磨きを嫌がる際の対処法【嫌がり方別】
抵抗の出方は犬によって違います。まずは愛犬がどの段階にいるかを確かめてください。
| 嫌がり方 | 犬の状態 | 考えられる理由 | 今日からできること | 避けたい対応 |
| 顔をそむける、口を閉じる | 少し警戒している | 道具や手の動きが予測できず身構えている | 指にジェルを付けて舐めさせ、その日は終わる | 顎を持って正面を向かせる |
| 逃げる、隠れる | 歯磨きに悪い記憶がある | 歯ブラシが嫌な出来事の合図になっている | 歯ブラシを片づけ、くつろいでいるときにマズルを撫でる | 追いかけて捕まえる |
| 唸る、歯をむく | 恐怖が強く出ている | 逃げても伝わらず、警告に切り替わっている | 道具を一切出さず、体を撫でるスキンシップに戻す | 唸ったことを叱る |
| 噛みつく、えずく | 限界を超えている、痛みの可能性 | 警告が通じず、痛みが隠れていることも多い | 自宅ケアを中断し、動物病院で口の中を診てもらう | 押さえつけて磨き切る |
無理に上の段階へ進めても、失敗の記憶が増えるだけです。以下では、対応が難しい4つのケースを詳しく見ていきます。
噛む:押さえつけず、一段階前に戻す
噛む行動は、「怖い」という気持ちの最終表現です。その手前には唸る、しっぽを下げる、体を固くするといったストレスのサインが必ず出ています。サインを無視し続ければ、犬は「唸っても伝わらないなら噛むしかない」と学習してしまいます。噛まれた経験は飼い主さんの側にも恐怖として残り、歯磨きそのものが遠のきます。
なお、マズルをつかんで押さえる方法は、かつてしつけとして広まりました。しかし現在は、強い嫌悪感を与えるうえに事故の報告もあるため、一般には推奨されない方法です。
暴れる:横に並んで座り、顎を固定しない
正面から向き合うと、犬は威圧されていると感じます。次の3点を意識するだけで、抵抗はぐっと減ります。
- 横に並んで座り、同じ方向を向く
- 歯ブラシは鉛筆のように持ち、にぎり込まない
- 空いた手は顎を固定せず、唇をめくるために軽く添える
えずく・吐く:歯ブラシの位置と時間帯を見直す
歯磨き中にえずいたり吐いたりするのは、歯ブラシが舌の奥や喉に触れているサインです。奥歯を磨こうとするあまり、ブラシが入りすぎているケースが多く見られます。小型犬や敏感な犬は、わずかな刺激でも嘔吐反射が出ます。実際に吐いてしまう場合は食後すぐの逆流も考えられるので、食事から1時間以上あけて行いましょう。毎回吐くようなら、歯磨き以外の体調不良が隠れている可能性もあります。
唸る・怒る:その日は中断して翌日やり直す
唸り声が出たら、その日は終わりにします。中断は失敗ではなく、正しい判断です。翌日は1つ前のステップに戻ってやり直しましょう。何度試しても唸る、口に手を近づけただけで噛みつく。そんなときは自宅での練習を一度止め、口の中に痛みがないか確認してもらってください。
歯磨きを嫌がる老犬のケア方法|無理は禁物
シニア期の歯磨きは、若い犬と同じようには進みません。体力も歯の状態も変わってきているので、力の入れ方も時間の取り方も見直す必要があります。無理をさせずにできる範囲を広げるコツを、3つの角度から見ていきましょう。
シニア期に急に嫌がり出す:体のサインの可能性
高齢になると唾液の分泌量が減り、免疫力も落ちます。その結果、歯周病が進みやすい口内環境になります。若いころは磨かせてくれたのに嫌がるようになったなら、まず痛みを疑ってください。「歯がぐらついている」、「歯茎から出血している」といった状態では、歯磨きより先に治療が必要です。
口を触られるのを嫌がるという変化も、老化のサインのひとつとして早めに拾ってあげたいところです。
抱え方と時間:老犬の体力に合わせる
シニア犬は関節に負担のかかる姿勢を長く保てません。立たせたまま磨くのではなく、伏せの姿勢や横になった状態でできる範囲を磨きます。歯そのものも脆くなっているので、毛のやわらかい歯ブラシを選んでください。1回1分以内を目安にし、数日かけて全体を磨くくらいがちょうどいいでしょう。
シニア期は食事の回数が増えることもあるので、そのうち1回のあとを歯磨きの時間に固定すると習慣にしやすくなります。
すでに歯石が付いている老犬にできること
歯石が付いてしまったら、自宅のケアでは落とせません。「高齢だから治療できない」と思われがちですが、事前の検査でリスクを確認すれば処置できるケースは多いです。放置するほど痛みで食欲が落ちるので、シニア期に入ったら健康診断のときに口の中もあわせて診てもらいましょう。
犬が歯磨きを嫌がるときの効果的なやり方【6ステップ】
ここからが実践編です。1つのステップに3日から1週間かけて構いません。急ぐほど遠回りになります。
①ジェルを舐めさせる
犬が好む味のデンタルジェルを指先に少し出し、舐めさせるところからスタートします。口に触れなくても大丈夫です。この段階の目的は、「歯磨きに使う道具のにおいと味を好きになってもらうこと」です。口まわりを触ることすら難しい犬は、ジェルを飲み水に溶かす方法から入ると負担が少なくて済みます。
②口まわりを触られることに慣らす
愛犬がくつろいでいるときを狙い、マズルをそっと撫でます。触らせてくれたら、すかさずご褒美を与えてください。時間が空くと、「何に対するご褒美なのか」犬には伝わりません。最初は数秒で切り上げ、日を追って少しずつ延ばしていきます。
③指で歯と歯茎に触れる
唇をめくって前歯に触れ、ご褒美。慣れてきたら犬歯、さらに奥歯へと範囲を広げます。嫌がる素振りを見せたら、その日はそこで終わりにしてください。1つ前の段階に戻る判断も、決して後退ではありません。
④濡らしたガーゼやシートで軽くこする
指に巻いたガーゼで、歯の表面を優しく撫でます。ここで気をつけたいのが乾いたまま使わないことです。乾燥したガーゼは歯茎を傷つけます。必ず水かぬるま湯で湿らせてください。歯磨きシートを使うなら、指にしっかり巻きつけると力が伝わりやすくなります。
⑤歯ブラシを口に入れるだけの練習をする
いよいよ歯ブラシですが、まだ磨きません。ジェルを付けた歯ブラシを舐めさせ、口の中に入れて出すだけを繰り返します。「歯ブラシが来ると、おいしいものが一緒に来る」と覚えてもらう時間です。
⑥汚れやすい奥歯から数本ずつ磨く
歯ブラシの当て方は、歯に対して45度が基本です。小刻みに動かし、力はほとんど入れません。歯の内側は唾液や舌の動きで比較的汚れが落ちやすいため、まずは外側を磨けば十分です。1か所磨くごとにご褒美を与えると、次につながります。
【注意】以下の5つは逆効果!
- 体を押さえつける、マズルをつかんで固定する
- 嫌がっているのに「あと少しだから」と続ける
- できなかった日に叱る、ため息をつく
- 人間用の歯磨き粉を使う(キシリトール中毒の危険があります)
- 歯石が付いた状態で、力を入れてこすり落とす(歯茎を傷つけます)
犬の歯磨きの頻度と時間の目安|愛犬が嫌がらないように
犬の歯垢は3日から5日ほどで歯石に変わります。人が20日ほどかかるのと比べると、かなり速いペースです。理由は、犬の口の中はアルカリ性で、歯垢が石灰化しやすいことあります。だからこそ理想は「毎日1回、難しければ3日に1回」を目安とするのが賢明です。
とはいえ、嫌がる犬に毎日長時間の歯磨きを課すのは現実的ではありません。おすすめは以下のことに沿って、3日かけて全部の歯を1周することです。
- 1日目は右の奥歯、2日目は左の奥歯、3日目は前歯
- 1回あたり30秒でも構わない
- 慣れていない犬は週2回から3回で始め、徐々に増やす
優先して磨きたいのは、上顎の第4前臼歯という大きな奥歯と、犬歯の根元です。この2か所は歯石が付きやすく、歯周病の起点になりやすい場所。全部は無理でも、ここだけは押さえておきたいところです。
どうしても歯磨きができない犬の代替手段
歯ブラシが最も効果的なのは事実ですが、何もしないよりは別の方法で口内環境を保つほうがずっといいです。愛犬が受け入れてくれるものを探しましょう。
- 歯磨きシート&指サック型ブラシ:指の感覚で力加減を調整できるため、歯ブラシより受け入れられやすい傾向があります。歯と歯の隙間までは届かないので、慣らすための道具と考えてください。外出先でも使いやすいところが利点です。
- デンタルジェルやスプレー:塗ったり吹きかけたりするだけなので、触られるのが苦手な犬にも取り入れやすい方法です。舐めるだけでも口内に成分が行き渡ります。必ず犬用を選んでください。人間用の歯磨き粉に含まれるキシリトールは、犬にとって「少量でも低血糖や肝障害を招く危険な成分」だと警告されています。
- デンタルガム:長く噛むことで歯垢の付着を減らす効果が期待できます。ただし歯に接触する部分は限られるため、犬歯や前歯にはあまり効果が見込めません。丸のみを防ぐには手で持って噛ませ、肥満を招かないよう1日の食事量から差し引いてください。
- 噛んで遊べるデンタルトイ:遊びの延長でケアできるので、歯磨きに強い抵抗がある犬にはありがたい選択肢です。布やロープ素材のものは歯にやさしく、繊維が歯の隙間に入り込んで汚れをかき出します。ロープ部分を噛んで遊べるトイなら、硬さによる破折の心配もありません。
ちなみに、硬いガムやヒマラヤチーズ、鹿の角、ひづめ、骨、硬いプラスチックのおもちゃの場合、噛んで歯が折れる可能性があります。これは、案外見落とされがちな落とし穴なので注意が必要です。「歯に良い」と書かれた製品でも起こり得る事故なので、素材は必ず確かめるようにしましょう。
犬が歯磨きを嫌がることに関するよくある質問
犬が歯磨きを嫌がる時のおすすめの方法は?
歯ブラシをいったん置き、好きな味のデンタルジェルを舐めさせるところからやり直す方法をおすすめします。口まわりを触る、唇をめくる、指で歯に触れる、ガーゼでこする、と1段階ずつ進み、それぞれの直後にご褒美を与えてください。1つの段階に1週間かけても構いません。
突然犬が歯磨きを嫌がるようになったのですが、どうしたらいいですか?
まず口の中を確認してください。歯茎の赤みや腫れ、出血、歯のぐらつき、口臭の変化があれば、痛みが原因の可能性が高いです。この状態で磨くと悪化するため、動物病院を受診しましょう。見た目に異常がないなら、押さえつけて磨く日が続いていなかったか振り返ってみてください。口元を強く押さえられた経験から、触らせてくれなくなる犬もいます。
犬が歯磨きをどうしてもできないときはどうしたらいいですか?
歯ブラシ以外の方法に切り替えて、ゼロの状態を避けることが先決です。飲み水にジェルを溶かす方法なら、口に触れずに始められます。そのうえで動物病院を受診してください。何をどこまでやるべきかは口の中の状態によって変わるため、実際に診てもらったうえで指導を受けるのが一番の近道です。
犬の歯磨きの代わりになるものは?
完全な代わりになるものは残念ながらありません。歯ブラシは歯と歯茎の境目の汚れを落とせる唯一の道具だからです。そのうえで補助として役立つのが、歯磨きシート、デンタルジェル、スプレー、デンタルガム、デンタルトイです。硬すぎるガムやおもちゃは歯の破折につながるので、素材の硬さは必ず確かめてください。
犬の歯磨きを簡単にする方法は?
完璧を目指さないことに尽きます。1回で全部磨こうとせず、3日かけて1周する計画に変えてみてください。1日30秒でも十分です。汚れやすい上顎の奥歯と犬歯の根元を優先すれば、短時間でも効果は出ます。散歩のあとなど愛犬が落ち着いている時間帯を選び、終わったら必ず褒める。この積み重ねが結果につながります。
まとめ
犬が歯磨きを嫌がるのは自然な反応であり、飼い主さんの努力不足ではありません。大事なのは、慣れていないから嫌がるのか、痛いから嫌がるのかを見極めることです。痛みが原因なら治療が先、慣れの問題なら1段階ずつやり直せば道は開けます。今日できたことが指1本分でも、それは前進です。愛犬のペースに合わせて、気長に続けていきましょう。
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